甘酸っぱい恋愛を描いたハチクロとは打って変わって題材は将棋! 最初の印象は「マジで?」やった。
主人公の桐山零を中心とした人間模様を描く作品で、ハチクロよりももっと重くて深い作品になりそう。彼は、史上5人目の中学生でプロになったプロ棋士。将棋は強いんやけど、人間的には弱い印象かな。登場人物は、あかり姉ちゃん、ひなちゃん、モモの3姉妹、自称ライバル二海堂、義理の父の幸田、義理の姉の香子、などなどたくさん。みんな「零」を何かしらの形で気にかけとるんやけど、彼はそれをうまく消化できてない感じ。ぶっちゃけものすごいもどかしい……。
読み進めていくと「もしかして羽海野さん自身、迷いながら悩みながら描いているのかもしれないな」と感じた。零を自分自身に重ね合わせている気がするのよね。恋愛マンガからいきなり将棋やもん、そりゃ戸惑うこともあるよな。1巻のおまけページでその回答になるようなことが書かれとったよ。
色んな方になぜこの題材を? との質問をいただきましたが、まだうまく説明できないのですただ、マンガ作業というモノは果てしない自問自答に似ています。「どうしても気になってしまった」という事は、今の私が「どうしても考えなければならなかった事」がきっとその箱に入っているという事なのでしょう。
私が零君と一緒に真剣に「迷い」「考え続ける旅」をどうか見守っていただけたらと思います
「零」の弱さって人間が誰しも持っているものやと思うんやけど、自分が弱いことって認めたくないじゃない? でも、そういうところを認めて乗り越えていく物語なのかも。だから「将棋」っていうあまり馴染みのない題材でも共感できる部分がたくさんあった。将棋のルールは全然わからないので、マンガの間に挿入されているコラムで勉強しとるよ。もちろん、彼女独特の優しい柔らかい言い回しやグッとくる描写は変わらないので、読むたびに号泣。
もちろん零の成長も楽しみやけど、自分にも「ちゃんとがんばっとる?」って聞きたくなるような作品です。
白泉社 (2008-11-28)
どこを斬っても、いい!
どろどろした共感
まだまだこれから
かっこ悪い負け方が、いい
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