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魔笛(野沢尚)

前に読んだことがあったんやけど、どうしてももう1度読みたくなって本棚を探したんやけど見つからなくて結局買っちゃいました。

魔笛 (講談社文庫)

物語の主人公は、鳴尾良輔という刑事、ストーリーテラーは照屋礼子。彼女は公安の刑事でメシア神道という宗教団体にスパイとして潜入していました。しかし、ミイラ取りがミイラになりメシア神道に信心してしまう。そして、メシア神道の教祖坂上輪水の死刑が確定したと同時に起こった無差別爆弾テロ。その犯人は照屋礼子でした。物語は彼女の獄中の手記の形で展開していきます。

警察内部でのいさかいや宗教にハマってしまう人の心理が細かく描かれていて、小説というよりもドキュメンタリーを読んでいるように感じた。どうして言葉だけでここまで緊迫した情景を表現できるのか不思議。

野沢さんの作品は読み終わったあとに何とも言えないやるせなさみたいなものが残るんやけど、魔笛に関してはそういうものがなかった。1つの事件を振り返る形で書かれているせいか、過去に起こった出来事としてとらえられて距離を置いて読み進められたせいやと思う。しかも、終わってから珍しくすっきりと一区切りがついた気持ちになった。ただ、やっぱり大きな機関を巻き込んだ隠蔽工作や圧力には恐怖を感じて、彼の作品ならではの怖さが残った。その怖さが私が彼の作品に魅力を感じている理由だと思う。

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