最初に「正統派」と書いたけど、野沢節がふんだんに盛り込まれています。
元恋人に再会する「ふたたびの恋」、息子の友人に恋をする「恋のきずな」、息子をなくしてしまった夫婦の物語「さよならを言う恋」の短編3話から成り立っています。どの話もそれぞれに味わい深い。
「ふたたびの恋」では、かつて恋人だった2人が少しずつ心を通わせていく流れを丁寧に描かれていた。「恋のきずな」では、通じ合っているのに決して交わらない2人の気持ちにもどかしく、ただどうしても仕方ないと思わせる。ただただ、切ない。「さよならを言う恋」では、子どもをなくした虚無感が深く深く表現されていた。
どのストーリーも違う形であるものの「2人とその周囲の何人か」を描いている。基本的には2人の視点にあわせられているけど、きちんと周囲からの見え方を押さえているので、ドラマや舞台を観劇している気持ちになった。
いつもの野沢作品みたいにズッシリと落ちる内容じゃないため、気持ちよく読めるかな。リハビリがてら読むには最適でした。野沢さんの作品は、だんだんと落ちていくストーリーが多いけど、たまにこういう恋愛モノや青春モノもあるので、落ち込むのに疲れたらいつもと気持ちを変えて読んでみるのもいいかもしれません。
恋人よ〈上〉 (幻冬舎文庫)
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野沢 尚
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おすすめ度の平均:
描写の素晴らしさは一級品ありえないんだけど…
心振るわせる感動作
泣けた・・・
ドラマの様な出来事
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