待ちに待ったNODA・MAP! 野田秀樹さんが池袋芸術劇場の芸術監督に就任したので今年から池袋で開演となりました。今回は書き下ろし「ザ・キャラクター」。ヒロイン役は宮沢りえです。
ギリシャ神話とカルト宗教を題材にしたお話です。「それは、町のなんでもない小さな書道教室からはじまった……」というキャッチフレーズの通り、書道教室が舞台。書道教室の家元を古田新太、弟の俤(おもかげ)を探して教団への潜入する謎の女・マドロミを宮沢りえが演じ、家元の妻を野田秀樹、教団の団員を藤井隆、橋爪功と実力派俳優が並びます。ただの書道教室がだんだんとカルト宗教に変化していくさまをギリシャ神話の神々と重ねられていました。そして最後には誰もが衝撃を受けた日本の宗教団体を表現し、もう10年以上経ちましたが記憶に残っているあの事件へと繋がります。
これぞNODA・MAPと思わせるような、スピード感に溢れた、テンポよい台詞回しは見物。韻を踏むのも忘れていません。「救いの中には『求』がある」「魂の中に『鬼』が住む」「月日を経て『魂胆』になる」など、教祖である家元とマドロミの掛け合いは絶妙でした
ラストは、地下鉄で起こったあの事件と同様、ビニール袋に入れた毒薬を傘で突き刺します。たくさんの人が一瞬にして消えてしまったけど、何でもなかった。たまたま人だっただけで、それは何でもよかったた。ゲームというよりはもっと幼稚な積み木を崩すぐらいの気持ちで起こしたことだったのでしょう。マドロミが弟に対して「紫色の凍えた醜いナルキッソス」と叫ぶシーン、そのときは意味がわからなかったんやけどあとで「紫色の法衣」の比喩だったということを知り言葉を失いました
その台詞に込められたのは徹底的な批判。
いろいろな想いを盛り込みすぎたのかもしれません。そして、その想いが観客に伝わりすぎだったのかもしれません。怖くて、悲しくて、救いようがなくて、泣けた。これだけ比喩しているにもかかわらず彼は1度も宗教団体の名前も事件の名前を明らかにしていません。それは「もうわかるだろう」という思いと「注目してはいけない」という意味が込められているのではないでしょうか。
こんなにリアルに救いようがないストーリーは初めてでした。ギリシャ神話のおかげで少し寓話性が出て、楽になったぐらい、観劇するのが本当に本当にしんどかった。
伏線を追っかけるのと自分が持っている数少ない知識を総動員するのにいっぱいいっぱいで、クタクタ。あとでいろいろな解釈があることを知り、勉強させてもらいました。個人的にこのエントリーが大変参考になりました。
▼野田地図(NODA・MAP)第15回公演「ザ・キャラクター」@東京芸術劇場 中ホール 19:00開演:defeated.
いつも内容を把握するのに必死になるので、「これからは前情報を入れてから観よう」と誓ったよ。もう何度もNODA・MAPを観劇しているのにやっと気づいた……。
最後の最後まで完成度の高い作品、おもしろかったなんていう言葉では片付けられない感情とともにまた、野田秀樹の魅力に取り憑かれました。
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